学習会でよくいただくご質問

 

【勤務時間調査】

 

Q.職員団体からの交渉申入れに応じないのですが。

 

A. 不当労働行為です。

  

 交渉すべき勤務条件とは、地方公務員法55条、労働基準法施行規則(5条)に具体的に示されています。

 

地公法55条

 「勤務時間」

労基則

 第5条2  「所定の労働時間を超える労働の有無」

     7 「安全及び衛生に関する事項」

 

Q.職場で、勤務時間調査は「超勤は多くしないように」、「8月は集めない」等の説明があります。

 

A.そもそも労働時間調査の開始の引き金になったものに、過労によるうつ病が原因となって自殺した労働者が「過労自殺」と認定された電通事件(最高裁判決2000.3.24)があります。

  

  同社は自己申告により労働時間を把握していましたが、それによると自殺前の9ヶ月間平均の1日平均の残業時間は約3時間30分でした。しかし、実際に社内にいた時間と比べると、社内で頻繁に徹夜をしているなど、大きな差がみられました。

 

  裁判所は、この差の時間も基本的には業務の遂行に充てられていたと判断したのです。このように、労働時間を労働者の自己申告制にし、実際の労働時間とはかけ離れた労働時間を会社が把握していても、労働者の過労防止には役立ちません。

 

  同社では、労働時間の把握を正確に行わず、長時間労働を見過ごした結果、多大な損害賠償をも支払う羽目になりました。

自己申告制が安易に用いられると、その運用が種々の要因から適正に行われないため、労働時間が過少申告されることにもなりかねないのです。

 

 

これを防ぐには、使用者は、労働者個々人の労働時間を正確に把握する必要があります。このため、厚労省では、労働時間の適正な把握を行うためには、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があるとしているのです。

 

「出退勤調査」は厚労省通知(2001.4.6)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」に基づいていて、使用者に細かい措置を求めています。

 

 

たとえ、夏休みで超勤が0時間であろうと、「0時間」であるということを把握しないといけないのです。

 

Q.勤務時間調査は何のためにするのですか?

 

A.勤務時間調査の目的として、次のことが考えられます。

 

①実態把握

・超勤の実態をつかめる。

・超勤の原因をつかめる。

・繁忙期をつかめる。

 

②改善対策

・超勤原因を職場で共有し、原因解消のための具体策の検討ができる。

・改善策の実施へとつなげられる。

・次年度教育課程編成に活かせる。

 

③自己防衛

・「働き過ぎ」を実感できる。

・「医師による面接指導」を受診できる。

・万が一の場合(公務災害)の証拠になる。

 

 これらの目的を提示することによって、職員が意識的に労働時間調査に取り組むようになっていきます。

 

Q.勤務時間調査の結果は公表されるのですか?

 

 

A.上の目的で述べたように、個人の健康管理だけの目的ではありません。

 職場の勤務時間適正化・超勤改善に役立てる目的がありますから、衛生委員会での協議事項になりますし、職員一人一人がこの問題を考えていく必要があります。

 したがって、集団的な勤務時間の結果について実態がわからないことには話し合い自体が成立しません。

 

Q.自己申告(勤務時間調査)の提出率が悪いのですが。

 

A.労働時間把握は使用者の義務であることは法令上も明らかです。市教委は事業者として当然のことながら調査結果を報告させていますから、管理職が先頭に立って100%回収するはずです。

 自己申告方式ですが、3年保存の公文書扱いです。

 常に100%を意識し、一度も気を緩めないことが大切です。

 

Q.長時間労働者に医師の面接指導を強制的に受けさせられないのですか。

 

A.本人の申出が前提です。

 強制力や事業者の強制義務はありません。衛生委員会は、「長時間労働による職員の健康障害の防止対策(必要な措置、周知、環境整備等)」を実施しなくてはなりませんから、対象者に対し、しつこく勧告することぐらいは可能でしょう。

 また、事業者は労働者の安全と健康を確保するようにしなければなりませんから(安衛法3条)、当然受診を勧めるべきことは明らかです。

 同時に、取り組みとしては、面接指導の受診基準(1008045時間)に到達しないように、全体の勤務時間の適正化を図ることが求められます。

 

 

詳しくは『学校衛生推進者必携』をご覧ください。

 
   

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