学習会でよくいただくご質問

 

【衛生委員会】

 

Q.衛生委員会は何をするところなのですか?

  

A.衛生委員会は、学校教育法37条に基づく校務分掌組織ではありません。

 衛生委員会は安衛法18条に根拠がありますので、他の校内委員会とは違い、本来、校務分掌組織には含まれないものです。内容も、労使対等、毎月1回以上開催、議事概要を職員に周知する等、いろいろ細かいルールも法令で定められており、他の校内委員会とは運営も大きく異なっています。衛生委員会が行うことは次の通りです。 

 

 

●法18(衛生委員会)【違反50万円以下の罰金】

 

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

  1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
  2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
  3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
  4. 前3号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項 (「規程の作成」、「安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善」、「衛生教育」、「健康診断並びにその結果に対する対策」、長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策」、「労働者の精神的健康の保持増進対策」など)

 

   職場における安全衛生を確保するためには、単に事業者の方で一方的に措置を講じるだけでなく、その職場の安全衛生問題について、職員が十分に関心を持ち、その意見が事業者の行う安全衛生のための施策に反映される必要があります。

 このため安衛法は、一定の事業場において、職員の危険または健康障害を防止するための基本対策等、衛生に関する重要事項について調査審議するため、衛生委員会を設置することを事業者に義務付けています。

  

 

Q.衛生委員会はどのように運営すればよいですか?

 

A.次の点に留意する必要があります。

  1.調査審議することが最終目的ではないこと

 当たり前の話ですが、調査審議だけで終わってしまっては衛生委員会の目的は果たせません。調査審議の結果や出された意見がどのように事業者(市教委)に伝わり、事業者レベルでどのように検討され、処置されたのか、結果を含めプロセスを明確にする必要があります。

 

 

労働安全衛生法等の一部を改正する法律等の施行について 

                                    (厚労省通知2006.2.24)

 衛生委員会等において調査審議を行った結果、一定の事項について結論を得た場合については、これに基づいて着実に対策を実施するなど、事業者はこの結論を当然に尊重すべきものであること。

 

   

  衛生委員会の合意事項が実施されずにいると委員会は形骸化してきますので、合意事項の実施率の向上は衛生委員会を活性化させるための最重要事項です。

 

 

 2.調査審議機関であり、意思決定機関ではないこと

 

 労働者側としては衛生委員会の機能・権限を強化して、意思決定機関扱いする方向に向かいがちですが、法の趣旨からみると望ましいことではありません。

 

 なぜなら事業場の安全衛生に責任を負っているのは本来事業者であり、衛生委員会に意思決定機能を持たすことは、事業者責任を曖昧にするおそれがあるからです。

 

 調査審議結果に関する意思決定はあくまでも事業者がすべきととらえます。決定したことは業務の一環として、職場のライン(業務命令系統)と労働者の協力(法4条)で実現していきます法令・通知に我々に不利なものは一つもありません。あとはどれだけ、腹を据えて粘り強くできるかです。

 

3.多数決ではなく、全会一致を目指すこと

 安全衛生に関する措置は、本来、客観的・科学的に定まるべきものです。教育論議の意見対立は結構なことですが、職員の生命や健康という人権に関わる問題は、労使の力関係や功利主義などによって左右されるべきものではありません。

 

 ですから、多少の議論はあっても最終的には落ち着くべきところへ落ち着くのが一般的です。したがって、衛生委員会は多数決を採用しません。(1972.9.18基発第602号)

 

 安衛法18条の規定によれば、労働者側推薦の委員は半数であり、使用者側は常に議長1人分だけ人数が多くなるので、過半数で議事を進める限り労働者側は不利になります。したがって、過半数の力で強引に運営する限り、労働者側の推薦する委員を入れた意味はなくなってしまいます。そこで旧労働省は次の通知を出して、時間を理由に審議を打ち切ることは無いことにしています。

 

 

●労働安全衛生法の施行について

(1972.9.18基発第91)

 安全・衛生委員会は一定規模等の事業場に設置義務があり、事業者が講ずべき事業場の安全、衛生対策の推進について事業者が必要な意見を聴取し、その協力を得るために設置運営されるものであり、したがつて、安全・衛生委員会の活動は労働時間内に行なうのを原則とすること。

 安全・衛生委員会は、労使が協力し合つて、当該事業場における安全衛生問題を調査審議するための場であつて、団体交渉を行なうところではないものであること。なお、安全・衛生委員会の設置の趣旨にかんがみ、同委員会において問題のある事項については、労使が納得の行くまで話し合い、労使の一致した意見に基づいて行動することが望ましいこと。

 

●労働安全衛生法および同法施行令の施行について

       (1972.9.18基発第602)

 安全・衛生委員会の運営について、従来の過半数決定の規定を削除したのは、安全、衛生問題の本来的性格から、労使の意見の合致を前提とすることが望ましいという見解に基づくものであること。

 安全・衛生委員会の会議の開催に要する時間は労働時間と解されること。従つて、当該会議が法定時間外に行なわれた場合には、それに参加した労働者に対し、当然、割増賃金が支払われなければならないものであること。

 

  

 もどかしいようですが、この原則で運営することが結局は衛生委員会の活性化につながります。意見が分かれるということは、まだ十分議論が煮詰まっていない証拠で、労使の意見が一致するまでよく話し合うことが大切です。

 

 

Q.衛生委員会で話し合ったことは職員へどのように通知するのですか?

 

A.衛生委員会の議事概要の職員への周知は、次の通り行います。

 

 

●則23条(委員会の会議)

 

3 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によって労働者に周知させなければならない。

一  常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

二  書面を労働者に交付すること。

三  磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

4 事業者は、委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを3年間保存しなければならない。

 

 

  職場における安全衛生管理は、本来、事業者の責任において進められるべきものですが、同時に労働者の協力なくしては、その円滑な推進を期待することは困難です。

 安衛法が衛生委員会を設置し、労働者の意見を聴くための機会を設けている所以もここにあります。

 したがって、衛生委員会に労働者の意見を求めておきながら、その結果を職場に還元、反映させないのであれば、衛生委員会の活動の成果を活かすことになりません。

 

 則233項は、「議事概要」を文書等の目に見える形で知らせることを定めたものです。

 しかしながら、文書等はいずれも職員が読むことが前提となりますが、職場内の情報の種類が多いため、すべての職員がこれらの情報に目を通すとは限りません。

 そのため、A小では毎月の職員会議で書面と口頭の両方で議事概要を周知するようにしています。

 

 ここで注意すべきことは、議事概要の「周知」であって、議事概要の「提案」ではないということです。

 つまり、職員会議等で周知することはすでに衛生委員会で議論した末の「調査審議事項」あるいは事業者(校長)の「決定事項」であって、基本的に職員会議で再議論する性質のものではありません。

 なぜなら、法令上、労働者の意見を聴く機会は、すでに労使同数の代議制とでもいえる衛生委員会で終了しています。

 事業者は、最終的に「事業者責任」を問われる性格から、衛生委員会で調査審議したことの実現は職員会議を待たずとも、断固として実行しなくては責任を果たすことにならない立場です。

 ですから、職員会議はあくまで周知の場であり、調査審議の内容を再度蒸し返すような場ではないのです。 

 

 

Q.毎月、衛生委員会が開催されていません。

 

A.毎月開催の根拠は、次の通りです。

 

 

●則23(委員会の会議)

 

 事業者は、衛生委員会を毎月1回以上開催するようにしなければならない。

2 委員会の運営について必要な事項は、委員会が定める。

 

 

  A小では、定期的に毎月1回、さらに事故災害などの緊急事態が起こればすぐに開催するようにしています。

 「みんな忙しいのだから学期に1回で良いのではないか」などと公言する事業者(校長)もいますが、本末転倒の発想です。

 「忙しいから」こそ衛生委員会の出番なのであって、「忙しい」を解消するのが衛生委員会本来の役割だからです。

 これらは、労働安全衛生の目的や重要性が十分に認識されていないことの表れです。

 

 1.毎月開催の意義

 学期に1回とか、いつあるかわからないような不定期開催では調査審議や活動が深まらず、成果も期待できません。そのサイクルは、最低でも月1回で、次回までの行動目標や計画を明確にして、職場にリズムを持たせることが大切です。毎月開催することによって次の変化が期待できます。

 

① 審議時間や周知の時間が増え(40+10)×11=9時間、調査審議や労安活動が活性化します。(学期1回では、年に40分×3回=2時間程度でしょう)

② 年間の活動計画やPDCAサイクル(計画→実施→評価→改善→計画…)が実行できます。

③ 「忙しい」を解消するのが衛生委員会の本来の役割です。労働時間調査を実施すれば、なおのこと毎月の集計や点検、対策が重要になります。

 

「忙しい」を言い訳にさせないで、職場実態を指摘しながら法令通りの開催を求めていくことが必要です。

 少なくとも法令に基づいて衛生委員会を立ち上げているのであれば、開催についても「毎月1回以上」と法令に基づくのが道理でしょう。

 

2.毎月開催の実施

  実際、毎月開催に漕ぎ着けるのはそれほど難しいことではありません。A小では長年、学期1回の開催でしたが、毎月開催を提案するとあっさり実現しました。

 それは「法令にある」の一言で済む話です。それまで、毎月開催という発想自体が職員の誰にもなかったのです。

 本来、法令にない「校内委員会」などは毎月確実に行うのに、法に明文化してある衛生委員会を開催しないのは矛盾した話です。

 

 もし、仮に「忙しいから」と消極的であれば、取っかかりとして毎月開催を前提に、その開催時間のみを少し譲歩する(15分とか)などの方法も考えられます。大事なのはとにかく毎月継続させることです。

 また、年度途中であっても、いくらでも開催サイクルの変更は可能です。

 なお、毎月の開催日については、職員会議で衛生委員会での「議事概要を職員に周知」(233)するため、A小ではその月の職員会議以前に開催しています。

 

 労働安全衛生活動とは、労働者保護をうたう安衛法を「徹底的に遵守させる」取り組みです。したがって、行き詰まったら安衛法に立ち返ることです。すると、安衛法は必ず労働者に救いの手を差しのべてくれます。したがって、労働者側の学習は不可欠なのです。

 

3.毎月開催だと忙しい

  また、「毎月開催だと、ますます忙しくなるのではないか」という懸念に対しては、根拠法令だけでなく、文科省通知にあったように、「労働安全衛生は教育条件」であることも一言添えると良いでしょう。

 よい仕事をするためには、何よりも職員が笑顔で心身ともに健康でなくてはなりません。

 教育条件の最たるものが子どもの目の前にいる教職員であるとするならば、その忙しさを解消し、生き生きと教育活動に打ち込めるようにするのが労安活動の目的であり、事業者の責任であることを共通認識していくと良いと思います。

 

 ある程度回数を重ね、成果が出てくるようになると、衛生委員会そのものが「余計な仕事」であるような受け止め方は次第になくなります。そのためには小さくとも具体的な成果を出していくことが大切です。これが無いといつまで経っても「会議のための会議」になって、職場のお荷物になってしまいます。

 

4.名称が「衛生委員会」ではない

  法の「衛生委員会」と市町村の規程にある「学校衛生推進委員会」や「衛生委員会に準ずる組織」では名称が違うではないか、という指摘もありますが、これらは同等に扱うことができます。

 

  そもそも「準ずる」とは、「一定の定め、方法等を基準、模範とし、これと基本的に同様の取扱い、処理をすること。

 若干の修正はあるがおおむね同様との意。類似の性質、内容、要件等を有している別のものについて、そのあるものと同じ取扱い、処理をする場合に使用される語」(『法律用語辞典』内閣法制局法律用語研究会編)と解釈されています。

 

 また、則23条の2「意見を聴くための機会」には、「衛生の委員会」も含まれていますので、「意見を聴くための機会」といえども衛生委員会に準じた取扱いになると解釈できます。

 

 

●令9(衛生委員会を設けるべき事業場)

 

 衛生委員会を設けるべき事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

 

●則23条の2(関係労働者の意見の聴取)

 

 委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。

 

●労働安全衛生規則の施行について(1972.9.18基発第610)

 

「関係労働者の意見を聴くための機会を設ける」とは、安全衛生の委員会、労働者の常会、職場懇談会等労働者の意見を聴くための措置を講ずることをいうものであること。

 

 

 したがって、「衛生委員会」という名称をそのまま規程で使用するのは法的には難しいとしても、少し控えめではあるけれど、実質的には「衛生委員会」と何ら変わらない「準ずる組織」としたのは妥当な線とも言えますし、ましてや、B市のような「学校衛生『推進』委員会」であれば、「衛生委員会」以上の活動を「推進」すべきでしょう。

 

5.50人未満の職場

  それでもなお、50人未満の職場では安衛令9条を逆手に取って毎月開催しないことも考えられますので、法の趣旨から反論しておきます。

  つまり、「うちの学校は職員が50人未満なのだから、法令上の衛生委員会ではない。したがって、うちの『衛生委員会』というのは名ばかりで、実は単なる『関係労働者の意見を聴くための機会』に過ぎない。だから、毎月開催の必要はない」という理屈です。

 

 このような意見に対し、どう反論すればよいのでしょうか。実はこの論法は、次の条文を無視しています。

 

 

●労基法1(労働条件の原則)

 

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

 

  労基法は労働条件の最低基準を定めていますが、この最低基準を理由として労働条件を低下させてはいけないことになっています。

 一方、安衛法は労基法とは元々一緒の法律で「相まつて」いるので、労基法の原則を受け継いでいます。

 つまり、安衛法の方も「この基準を理由として」労働条件を低下させてはならないことになります。

 

 安衛法の衛生委員会を設ける最低基準である50人以上という基準を“上回って”A小では40人でも設けているのに、この基準を悪用して、さらに規程の上でも「衛生委員会」の外観・実態を備えている「学校衛生推進委員会」や「衛生委員会に準ずる組織」を実質的に衛生委員会でないようにすることはできないのです。もしそんなことをすれば、労基法違反に問われることになります。

 

 勘違いしてはならないのは、設置義務がないということは、設置してならないのではなく、むしろ「その向上を図るように努めなければならない」のが法の趣旨だということです。

 ですから、基準以上のものを努力して設置することが必要ですし、大いに推奨されていることです。「青は藍より出でて藍より青し」なのです。

 

 市の規程に「毎月開催」と書いてある必要は特にありません。上位法である安衛法に書いてあれば十分です。(形式的効力の原理)

 安衛法では、「毎月開催」しないと目的が達成できないので、わざわざ「毎月開催」と具体的に規定していると解釈できます。ですから、それを下回ることは法の趣旨に反することになるのです。

 

 

Q 衛生委員会の委員はどのように選出されるのですか?

 

A.衛生委員会の委員については、校長の一存によって指名されるわけではなく、半数は職場の推薦手続きが必要です。

 

 

●労働安全衛生法および同法施行令の施行について

       (1972.9.18基発第602)

 

 衛生委員会の議長となる委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいては、その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては、労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならないこととされているが、種々の事情により労働者側の委員推薦が得られない場合には、事業者としては、委員推薦があるように誠意をもつて話し合うべきものであり、その話し合いを続けている過程において、衛生委員会の委員の推薦が労働者側から得られないために委員の指名もできず、委員会が設置されない場合があつたとしても、事業者に、衛生委員会の未設置に係る刑事責任の問題は発生しないと解されるものであること。

 また、「推薦に基づき指名」するとは、第17条から第19条までに定めるところにより、適法な委員の推薦があつた場合には、事業者は第1号の委員以外の委員の半数の限度において、その者を委員として指名しなければならない趣旨であること。

 

 

 「過半数を代表する者」とは、労基法によると「投票、挙手等の方法による手続により選出された者」(労基則6条の2)、「労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が該当する」1999.3.31基発169号)とされています。

 

 校長はもし、法令通りに委員を指名するなら、職員の過半数を代表する者の「推薦」に基づき指名しなければなりません。この場合の委員の意見は、文字通り「職場の過半数」を代表する意見となります。

 

 ところが、実務上はそんな面倒くさい手続きは、どこの学校もしていないのが実態です。

 

 現状として、校長は衛生委員会の活動をそれほど重視する傾向にはありませんから、人選もできるだけ穏便、簡潔に済ませたいというのが本音のところのようです。

 

 そうなると、やはり過半数を組織する職員団体がない場合でも、それなりに職員団体の顔を立て、当たり障りなく委員に指名しておくのが後々のためになると考えるのが、この場合の校長の選択のようです。

 

 具体的には、正式の推薦手続きを踏まず、職員団体と交渉した上で4月当初の職員会議に、校務分掌組織と同時に衛生委員・衛生推進者を発表し全職員の了承を得るという事後承諾の方法が一般的ではないでしょうか。

 

 万が一、職員団体を無視したところで、校長が原則通りの「過半数を代表する者の推薦」という手続きを踏むこと自体至難の業(面倒な作業)で、後々に職場の人間関係にわだかまりを残しかねません。

 職場の労働安全衛生については、交渉事項(地公法55)ですから、交渉の中で衛生委員の選出方法について協議しておくことがのぞましいことです。 

 

 Q.市教委に総括安全衛生委員会を設置する方がよいのではないですか?

 

A.総括安全衛生委員会に明確な法的根拠はありません。

 根拠がないことに一生懸命になるより、根拠があることに今は傾注すべきです。

  

 根拠を強いて挙げるならば安衛法第24条(事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない)です。労働安全衛生法の本旨は、「事業者責任」の明確化にありますが、各学校での安全衛生活動がバラバラな状態にあるのは、事業者としての責任を十分果たしているとは言えません。

 

市の総括衛生委員会の設置に当たっては注意すべき点もあります。

まず、委員の選考や構成における「労使対等」原則の徹底です。これは、いくつかの先行例を見ても、非常に厳しいものになっており、活動も行き詰まっています。これが中途半端だと、傀儡的になって力関係からどうしても不十分な活動にならざるを得ません。

 

このような事業者側の総括衛生委員会が全体に指示するようになれば、先進的な学校からすると逆に「足かせ」になる危険性をはらむことになります。

ですから、法的保護がない段階で、安易に労使対等ではない総括衛生委員会などは本来つくるべきではないと思います。

 

物事には順序というものがあります。

法令上は、衛生委員会は事業所(学校)単位に設置され、毎月開催されます。

現段階では、市内すべての学校に衛生委員会が設置され、とりあえずは活動が取り組まれています。それは、安衛法が学校ごとに「自主的な」活動を期待しているからです。ですから、順序としてはまず学校で法令通りにとことんやってみることが先決です。それなくして、一足飛びに総括安全衛生委員会とはどうしても無理があります。

そして十分取り組んだ末に、学校衛生委員会の限界や次の課題が見えてきます。

すると、「やっぱり市教委が事業者として総括衛生委員会を設置する必要がある」ということが自ずと明らかになるでしょう。このような過程をじっくり経る方が、無理がなく自然ではないかと思います。

 

最初から学校衛生委員会でできることに精一杯取り組まないで、いきなり上部の総括安全衛生委員会にお任せでは、下支えや労安活動の経験もなく果たして持続可能なのか疑問です。当面、足りない分については、地教委交渉の強化で十分対応できるでしょう。

 

学校衛生委員会だからできること、学校衛生委員会でなくてはできないことはいっぱいあります。総括安全衛生委員会は、ただ作れば良いというものではないのです。(その辺の論議が不足しています) 

 

 

 Q.衛生委員会(少人数)より、職員会議(全員)で話し合って決定すべきではないでしょうか?

 

A.その必要はありません。

  このような意見は、以下の点で誤解があるようです。

 

・各衛生委員は経験有識者として校務分掌発表時に選任・了承され、「事業者側代表」「職員側代表」として一任されており、人数についても、労使配分の規定がある。

・衛生委員会(調査審議機関)と職員会議(校長の諮問機関)は法的根拠がまったく異なる。

・職員の安全や健康に関することは、スピードが求められる。

・衛生委員会には長時間労働による健康障害防止等、多くの勤務上の調査審議と、事業者・校長に意見申述の権限が与えられている。

・衛生委員会での結論を事業者は尊重し、事業者の「責任」で職員に周知することになる。

・「衛生委員会等において調査審議を行った結果、一定の事項について結論を得た場合については、これに基づいて着実に対策を実施するなど、事業者はこの結論を当然に尊重すべきものであること。」(厚労省通知・2006.2.24)(つまり、職員会議以前に結論はすでに出ているということ)

・法令上、衛生委員会の協議・決定事項を、職員会議等で再協議する必要はない。 

 

 労安は、労使の代表者がそれぞれの立場を代表して話し合いを進めるのが本分であって、「船頭多くして船山に登る」結果になっては結局、職員全員が困ることになります。

 全員で協議するのは、一見民主的に見えますが、一方で議会を含め、社会の多くの組織が間接民主制を採用していることをどうとらえたらよいのでしょうか。

 法に基づいて労使の代表が衛生委員会で協議・決定したことを、一諮問機関に過ぎない(格下の)職員会議で協議する必要は基本的にはありません。(協議した場合が良いと事業者や衛生委員会が判断すれば考慮の余地はありますが)

 

  

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